生まれつきの繊細な気質の持ち主であるHSP。
(特に、HSPの気質を持ったお子さんをHSCと言います)
本記事では、HSP気質が原因で学校生活で消耗してしまい、学校に行けなくなってしまうケースについて、原因と対策をお話しします。
学校への伝え方、ご家庭でできる工夫もご紹介します!
HSPとは:先天的に繊細な気質を持った人のこと
HSPとは、生まれつき「非常に感受性が強く敏感な気質もった人」という意味で、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼び頭文字をとって「HSP(エイチ・エス・ピー」と呼ばれています。
http://www.madreclinic.jp/pm-top/pm-symptom/pm-symptom-22/
5人に1人が当てはまる先天的に繊細な気質で、心理学者であるエレイン・アーロン博士が提唱したものです。
DOESの特徴を全て持っていることが、判断の目安と言われています。
- 深い処理(Depth of processing)
- 刺激に反応しやすい(Overstimulated)
- 高い共感力(Emotionally reactive and high Empathy)
- 影響を受けやすい(Sensitivity to Subtleties)
この気質に生きづらさを抱えている人が多く、関連書籍「気がつきすぎて疲れるが驚くほどなくなる 繊細さんの本」も50万部越えのベストセラーとなりました。
HSP気質のお子さんは五感の刺激や人の心に敏感であるため、学校生活で消耗してしまうケースも少なくありません。
学校生活でよくあるHSPならではの悩みや消耗の原因、その対策をお話ししていきます。
HSP気質によって学校に行けないケース【原因と対処法】
主な原因5つ
- 感覚過敏(特に視覚・聴覚・温度)
- 空気を読めすぎちゃう・傷つきやすい
- 神経のたかぶりの反動で消耗しやすい
- 考えすぎてしまう
- HSPによる生きづらさから自己肯定感や自己効力感が低下している
原因①:感覚過敏(特に視覚・聴覚・温度)
HSPのお子さんは五感が過敏な傾向にあります。
特に学校という環境下だと、視覚・聴覚・温度で、不快感・疲労感を感じやすいです。
過敏な感覚によって、対策が違うので、項目別に分けて説明しますね。
視覚過敏
消耗しやすいシチュエーション |
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まぶしさ 雑然とした空間(片付いていない) 色の数が多い空間 |
対策 |
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サングラス(恥ずかしいと思うけど…) 可能な限り整理整頓 持ち物の色数を減らす・色のトーンを揃える 休み時間に目を閉じて休む |
まぶしさに過敏だと、教室にミラーボールがあるような疲労感でしょう。
また、色彩情報に過敏な場合は、ディズニーランドで勉強をしろと言われてるようなものでしょう。
それじゃぁ、疲れちゃうよね…
学校は自分だけの空間じゃないので、できることは限られていますが、自分の空間だけは視覚刺激を減らし、視覚を遮断して休む時間を設けることで、負担が減ります。
「無印良品」は疲れにくい、というHSPさんが多いです。
無印はものは多いけど、色調が落ち着いていて統一されており、疲労感を感じにくいのだと思います。
持ち物を揃えるときに、色合いを参考にしてみるといいかもしれませんね。
聴覚過敏
消耗しやすいシチュエーション |
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大きい音が耳に響く 雑音を広く拾ってしまう 生活音の不協和音(絶対音感のお子さん) |
対策 |
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イヤーマフ・耳栓の利用 休み時間は静かな部屋(保健室など)で休む |
学校という場所を静かに保つのは難しいです。
また、耳栓やイヤーマフを多用すると、肝心の授業が聞こえなかったり…
休み時間限定で耳栓やイヤーマフを利用したり、事情を説明して保健室で休息することで、疲労感が減り、学校に行きやすくなる可能性があります。
あと、個人的におすすめなのは『デジタル耳栓』
人の声や必要な生活音(クラクションなど)は聞こえるけど、生活のノイズ音を消してくれる耳栓です。
これだと、先生の許可があれば授業中も利用できます。
上記は4000円程度で購入できる、お手軽価格のもの。
もっと性能が良く1万円以上の高価なものはありますが、お子さんに合うかどうかわかりません。
こちらのキングジムのデジタル耳栓が、最初のお試しには適切かなと思います。
デジタル耳栓は私も持っています!
集中したいときや、疲れてる日の外出にも利用しています^^
温度過敏
消耗しやすいシチュエーション |
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夏の暑さ・冬の寒さ 冷房の寒さ・暖房の暑さ 梅雨時の湿気 汗による冷え |
対策 |
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着脱しやすい格好 (ひざ掛け、カーディガン、マフラーなど) ホッカイロ ハンディファンなどの、携帯できる冷房器具 着替えを置いておく |
自分の体感に合わせて、学校の冷暖房を調節することは難しいので、着脱しやすく体感温度を調節できる服装・防寒グッズ等を用意しましょう。
汗をかいて冷えてしまう場合に備え、インナーやワイシャツなどをロッカーに置いておくのもいいですね!
温度変化に弱いお子さんの場合、これだけでも学校での体力消耗を劇的に減らせる可能性があります。
原因②:空気を読めすぎちゃう・傷つきやすい
HSPさんは「察する」のが得意な人が多いです。
いわゆる、誰と打ち合わせをしていなくても、アイコンタクトだけで会話ができちゃうタイプ。
誰かがイライラしていたとか、不機嫌そうだった、ちょっとそっけなかった、友達が先生に怒られていた…など、感受性の高いHSPのお子さんには大きなストレスです。
しかも、HSPのお子さんの場合、察しようとしているわけではなく、勝手に察してしまいます。
そのため、気質を無視して「鈍感になろう」「気にすんな」なんていう対策も的外れ。
効果が出やすい対処法は「セルフモニタリング」です。
- あ、今、自分はあの子の態度に傷ついたんだな
- あの子の気持ちに共感しすぎてるな
- 先生の怒鳴り声がつらかったんだな
などと、心が不穏に揺れた自分自身を自分で観察し、脳内で実況します。
一時的に、感情と分離され、苦しさが軽減します。
そして、セルフモニタリングを繰り返していくと、自分の疲弊しやすいパターンと対処法がわかってきます。
少し時間はかかりますが、長い目で自分の取扱説明書を作っていくと、グンと生きやすくなりますよ!
あと「苦手な人と距離を置く」も有効手段ですが、学生という多感な時期はこれは難しいかも・・・
余計こじれることもありそう…
そうなんですよ…
「苦手な人と距離を置く」についてはできそうだったらやってみる、程度の認識でOKです。
原因③:神経のたかぶりの反動で消耗しやすい
HSPには神経が興奮しやすい(交感神経が優位になりやすい)という特徴もあります。
お子さんが、めちゃくちゃ楽しそうに友達と遊んできた翌日にぐったりしてしまうことはありませんか?
あまりにぐったりして動けなく、学校をお休みしてしまったりすることもあるのではないでしょうか。
興奮しすぎないように!というだけなら簡単ですが、気質なのでそもそも難しいです。
それに、青春くらい思いっきり遊んでほしいじゃないですか!興奮してゲラゲラ笑ってほしいじゃないですか!
そのため、私はご家庭で興奮を鎮める環境を作るのがベターと考えています。
- カフェイン飲料を控える
- 夜中のスマホを控える
- 夕食以降は間接照明にする
- ぬるめのお風呂に入る
- 夜は冷たい飲み物を控える
など、ご家庭では神経を落ち着かせる(副交感神経を優位にする)対策を試みてください。
原因④:考えすぎてしまう
DOESのD(Depth of processing)深い処理、という特性があるので、思考量も多いです。
これまた自動的に思考しちゃうわけなので、考えるのをやめろ!といってもどうにもなりません。
考えすぎる悪影響は、二種類。
- 考える内容によらず、脳のエネルギーを消耗しやすい
- 考える内容がネガティブだと、精神エネルギーも消耗しやすい
多分、学校に行けなくなっているお子さんの場合、両方が起きているんだと考えられます。
脳のエネルギーも精神エネルギーも尽きてしまって、学校にいく力が残っていないんだと思います。
この性質が強いお子さんには「マインドフルネス(瞑想)」がおすすめ。
どこの経営者だーい!と突っ込まれそうですが、親御さんのストレスも軽減するので、一緒に試してみてもいいと思います。
マインドフルネスは「今」に意識を集中する技術で、ストレス軽減の研究結果が得られています。
HSPのお子さんの場合、思考が「過去の後悔」や「未来の不安」に行ったり来たりで忙しい状態になっているので、マインドフルネスを習慣として脳のお掃除を定期的にしてあげるといいですよ^^
【マインドフルネス実践講座】(←クリック後、マインドフルネスで検索)
昨今注目されており、カテゴリ3位の人気講座です。親子ご家族みんなでストレスを軽減することができます。
※【ambR9m0】クーポンコードの利用で13,300円割引になるので、メモしておいてください。
単純に、脳の疲れを軽減するために「飴」を持たせて、適宜舐めるのもおすすめです!
ウィダーインゼリーのブドウ糖(脳疲労用)もあるので、試してみてもいいかもしれません。
また、ノンカフェインの栄養ドリンクも◎
原因⑤:HSPによる生きづらさから自己肯定感や自己効力感が低下している
HSP気質の二次被害的に、自己肯定感や自己効力感が低下している場合があります。
HSPに起因する生きづらさから、お子さんが自身の評価を下げてしまい、学校に行く気力が枯渇している状態です。
この場合はまずご家庭で「褒める」「認める」「受け入れる」を実践し、自信の回復=気力の回復を目指しましょう。
その時、できるだけ褒めポイントを具体的に伝えてあげてください!
「勉強してえらいね」
↓
- 漢字が得意なんだね!
- 苦手な教科にもチャレンジしてすごい!
- 字が丁寧だね!
- やろうと思って机に座ったことがえらいよ!
具体的に褒めるということは「本人が自分の長所を具体的に知ることができる」ということです。
また、一般的に言われる「小さな成功体験の積み重ね」にも相当します。
お子さん自身に、自分の長所をドンドン自覚して行ってもらいましょう!
自己肯定感・自己効力感の回復はあくまで二次症状対策です。
HSP気質自体の対策も別途進めてくださいね!
HSPは病気?診断はおりるのか
HSPは病名ではないため、医師の診断を受けることはできません。
ただ、感覚過敏の程度が著しく酷くなったり、HSP気質の生きづらさが原因で別の病気を発症した場合などは、診断がつくことがあります。
個人的に、精神科のお医者様に「HSPは存在するのか」と聞いてみました。
その先生の見解では「病気ではないし診断をおろせるほどではないけど、敏感・繊細なタイプだから生きづらいんだろうなと感じる患者さんはいる」とのことでした。
いわゆる「繊細・敏感のグレーゾーン」なのかな、と現場の所感を語ってくれました。
自己診断しかできないの?
YES。
HSPかどうかは自己診断しかできません。
HSPが医学的な診断でなく、レントゲンに写るようなものじゃない限り、HSPだと断定することは誰にもできません。
じゃあどうすればええねん!と。
HSPだと仮定して対策を打ってみて、効き目があればそれでいいのです。
お子さんがHSPかどうかが問題なのではありません。
お子さんが学校に行きたくないと申し出るほど、学校生活がつらいことが問題なのです。
つまり、お子さんのつらさが軽減すればそれで大成功。
つらさを軽減するための知識の一つとして『HSP』を捉えてみてください。
HSPであることを学校に伝えた方がいいのか
HSPであるとは伝えず、必要な配慮を具体的にお願いするのがベターです。
理解のある先生もいるかもしれませんが、基本的にHSPの理解は世間に深まっていません。
自己判断ゆえにファッション感覚で自称している人もおり、HSPにいいイメージを持っていない人もいます。
そのため、HSPの名を積極的に出すのは、避けた方が無難かと思います。
配慮をお願いする時は、以下のように具体的に依頼しましょう。
- 低血糖になりやすいので飴玉の補給を許可してもらえないか
- 疲れやすい体質なので、昼休みに保健室で休ませてもらえないか
- 温度変化で体調を崩しやすいので、防寒着の着用や携帯の冷房器具の利用を認めてもらえないか
先生によって理解度が異なる部分ではありますが、一度打診して見る価値はあるでしょう!
親御さんが家庭でできるHSPのお子さんへの工夫
- HSP対策グッズの購入
- カフェインを控える
- 静かでリラックスできる空間を準備
- 褒める・認める・安心させる
- お子さん自身が自分の性質を理解できるよう説明する
特に、静かでリラックスできる家庭づくりはご家族みんなの理解が必要です。
夕食後は間接照明にする、テレビの音量を下げるなど、協力しあえる環境が作れるとベストです。
家族を巻き込まない方法としては「電気を消してお風呂」がおすすめ。
照明を消して、鎮静系の入浴剤を入れて、1日の疲れをリセットしてもらいましょう!
まとめ:HSPは治すものではないので、生きやすくする対策を打つ!
この記事では、「学校に行きたくない原因がHSP(HSC)ではないか?」と考えられるお子さんについて、原因とそれぞれの対策についてお話ししました。
- HSPは先天的な繊細(敏感)な気質で、医療的な診断ではない
- 感覚過敏、高い共感性や洞察力などが原因で、学校生活で消耗しやすい
- どの特性が強いのか見極め、対策を打つことが必要
- 先生に相談するときは、HSPと言わずに具体的な配慮をお願いするのがベター
- 家庭でできる対策もあるので、やってみてね!
お子さんの繊細さはあくまで「気質」
治そうとするものではなく、折り合いをつけ、むしろ活かしていくものです。
子どものうちは、折り合いをつけるのに苦労するかもしれません。
ただ、早いうちに自分の気質とうまく付き合えるようになっておくと、社会人になってからの苦労は格段に減ります。
誰しも生まれ持ったものは長所にも短所にもなりうるもの。
お子さん自身が自分の気質と仲良くできるように、大人もサポートしていきましょう!